花とその向こうの笑顔

2019年1月1日付 さくら新聞掲載 その昔、アメリカの大学院に行く理由として「安全保障を勉強したい」と母に説明したところ、「どうしてお花やお茶を習わないのか」と返され、そのトンチンカンなコメントにクラクラしたことがある。まったく比べ物にならないではないか。それでも祖母はお茶とお花の先生であり、元旦には母の活けた花を見て育ったためか、その時は「安全保障と全く関係ない」と一蹴したものの、いつかは自分も花の活け方を習うだろうと思っていた。...

All the single ladies!

2018年12月1日付 さくら新聞掲載 「DCの日本人女性は強いですよね。」ワシントンDCに来たばかりの日本人の方 からしばしば聞く、お褒めの言葉だ。そうか、私たちは強いのか?よくも悪くも、DCにずっと住んでいると、DCの日常を「世の中こういうもの」「これがアメリカ」と知らず知らず、思いこんでしまう節がある。DCで女性として生きていくとはどういうことなのだろう。...

時間にまつわるあれこれ

2018年11月3日付 さくら新聞掲載 突然だが、皆さんは、何分遅れなら、遅れてくる友人を許せるだろうか? そもそも何分遅刻したら「遅刻」だろうか。 かくいう私は、昔から「時間通り」に到着することは苦手なことの一つ 。むしろ時間に間に合いそうになるとどうも居心地が悪く感じる(そういう病気があればぜひそのように診断してもらって、医師の診断書として使いたいくらいだ)。もちろんビジネスではなく、パーソナルな関係の場合の話である。...

真実を追う

2018年10月6日付 さくら新聞掲載 時は10月。食欲の秋、そして芸術の秋の真っ只中。ワシントンDCにせっかく住んでいるのだからと、スミソニアンの博物館群にでも行ってみたりする季節。スミソニアンは、恥ずかしながら、これだけ長く住んでいるのに未だ全部制覇できていないのだが、ワシントンには博物館以外にももう一つ、日本人だからこそ行ってみる価値があるかもしれない場所がある。それは、米国国立公文書館(National Archives)だ。...

荒野の駆け引き

2018年9月8日付 さくら新聞掲載 楽しかった夏休みももう終わり。今年は、数年ぶりに日本の夏を堪能する機会に恵まれた。京都の湯葉料理に、季節ものののど黒の塩焼きと日本酒。 緑燃ゆる龍安寺の境内と嵐山の竹林。ゴミのない清潔な街並み。そしてなんと言っても丁寧で物腰柔らかな笑顔のサービス。母国ながら、改めてこの美味しく美しい国に感激し、アメリカに戻るのがためらわれた程。...

影の立役者たち

2018年8月11日付 さくら新聞連載 「オラ(Hola)!」 親しみのわくその声を聞いて「もう6時か」と気づく。煌々と光る画面から顔を上げると、しわくちゃな顔をした60手前くらいの掃除のオジさんがにやっと笑っている。これからまだ残業が待ち受けている私に、いつもスペイン語で話しかけて来る人だ。 職場のゴミ箱を毎日空にしてくれるので挨拶をしていたら、いつの間にかそのたびにスペイン語会話をすることになってしまった。「また残業だ」とこぼすと彼は必ず、「Mucho trabajo, mucho...